事実とは何か 113 「誰もが水難から生還するにはどうしたらよいか」

今回の散歩の初日、加茂川の伏流水が生み出した美しい伊予西条の風景に夢か幻を見ているかのような気持ちでホテルに着きました。

 

その地域の放送を楽しみにしているのですぐにテレビをつけると、その加茂川の名前がニュースで出てきました。小学生が川で亡くなられたという悲しい事故でした。

「美しい!」と車窓から眺めた同じ頃その川の上流で水難事故があったことに、水の美しさに浮かれて怖さという現実を忘れていたとハッとしました。

 

テレビの画面にはその河川敷が写り、「ここでのおよぎきけん」という表示が映し出されていました。

それはきっと、「危ない場所なのに」「そばにいた人も目を離したのでは」と正しいことを言いたくなる気持ちにさせるだろうな、でも答えはそれだけではないだろうなとなんとなく危うさを感じました。

 

 

*斉藤秀俊氏の解説を読む*

 

水難学を知ってからは、気になる水の事故は斉藤俊秀氏の解説を読むようになりました。

 

とりわけため池や用水路の事故では、「ため池や用水路を放置しているなんて」「蓋をしろ」「柵をしろ」と言ったコメントがたくさん書き込まれるので、ちょっと心が痛くなりながらどうしたらよいのだろうと頭の中を整理するために解説を読みます。

なんといってもこの国の千数百年の歴史がある農業の大事なインフラですからね。

 

そしてプールや水遊びの事故も気になります。

今年も7月に入ると急に暑くなったせいでしょうか、川や海での事故のニュースが増えて解説も増えました。

ポイントは、平日の午後の事故という点です。毎年7月は夏休みまでの間、平日の午後の子どもの水難事故が多発します。(7月5日)

しっかりとした海水浴場での事故。

水遊びは膝下までの水深に留めるのがまずは水難事故防止の第一歩。(7月21日)

今の時期に一番起こりやすい事故が起きました。日頃から馴染みのある川。特に水かさは増えておらず穏やか。気温が高くて、川が気持ちよさそうに見える。

(子どもたちだけで川に近づかないために)「水辺に出かけるなら家の人達と週末に出かけようと、約束するのも一つの手段です」(7月26日)

 

 

どの解説も、当事者を責める言葉がなく再発防止の視点で書かれています。

お悔やみの言葉というのは難しいのですが、亡くなった方やそばにいた人達、ご遺族に鞭打つような言葉がないことに救われます。

そしてその事故の状況や対応についてわからないことはわからないとしながら、「水辺」と言っても多様な状況があり、それぞれの何が事故につながりやすいかが書かれています。

 

「水難学会」の会長挨拶を再掲します。

水難にあったらどうすればよいか、様々な解説がなされました。しっかりとした研究がなされないから、検証もされず妄想に基づいた解説がおこなわれる風潮がありました。昔は正しかったかもしれませんが今は違っているという解説もありました。ひとりの妄想におどらされることなく、誰もが水難から生還するにはどうしたらよいか。その答えを出すためにはさまざまな分野の専門家が建設的に議論する立場が必要です。一般社団法人水難学会はそのために設立されました。

 

こうした活動が末長く発展していき、社会に浸透していきますように。

 

 

 

 

 

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