今治駅に到着し、ここから今夜の宿泊先の伊予西条駅へと予讃線で戻ります。
ふと、また方向感覚がおかしくなりました。山が南側にあると、どうやら感覚がズレるようです。
予讃線の車窓に翌日訪ねる計画の干拓地が見えて、じきに伊予西条駅に到着しました。
今回の散歩は、この「うちぬき」を地図の中で見つけたことで計画ができあがったのですが、駅前の案内図に「うちぬき」の場所が描かれています。
猛暑ですが、ホテルまでそれをたどって歩くことにしましょう。
駅前の道を西へと歩き始めると、「駅前干拓地線」という石柱が建っていました。やはり干拓でできた土地のようです。
とちゅう、「うちぬき」と表示がありましたが残念ながら水は出ていません。
ちょっと不安になりながらさらに歩くと、西条市総合文化会館の先に池のような場所が見えてきました。
大きな池があり、水面が輝いています。
その向こうの中央構造線の奥に見える山々の中でも、ちょっと目立っているのが石鎚山でしょうか。
湧水のようなので近づいてみたいのですが、横断歩道を渡るのもためらう暑さです。
その流れがこちら側へと続いている場所には木陰のある遊歩道が見えたので、逃げ込むようにそちらに向かいました。
*ほたるの泉の遊歩道を歩く*
石積みの水路の続く遊歩道で、国分寺崖線の湧水や東久留米の湧水、富士市の湧水、熊本市の上江津湖あるいは柿田川湧水群などを思い出すような、のぞきこむだけで清流だとわかる水と涼しげな水草が青々と揺れています。
木陰のある遊歩道のベンチに腰掛けて、しばらく水面を眺めました。
木陰があれば35度の気温でも歩けそうです。
また元気になって水路沿いを歩くと小さな石碑がありました。
ほたるの泉
この泉は石鎚山系を源とする加茂川の伏流水が湧き出ています
昭和六十年一月四日名水百選に指定されました
平成三年吉日 西条市
予讃線の車窓から見えたあの美しい加茂川は、こんなに豊かな伏流水を生み出しているようでした。
住宅地の中を美しい水路が続いていて、探検するような気持ちで歩いていると数十メートルで広い池のような場所に出ました。
そしてその先の図書館のあたりまで、清らかな水をたたえた浅い池のような場所が続いています。
ガマの穂が水辺に生え、水草と白い水中花が見えます。
その風景は息が止まるかのような美しさでした。
図書館の西側には板張りのテラスが続いていて、夏の日差しをさえぎるようにベンチがありました。
またそこに座ってしばらく透き通る水底を眺めていると、子どもの頃に遊んだ裏庭の湧水にひき込まれるような感覚が呼び起こされました。
それが半世紀後に湧水を訪ね歩くようになり、またひとつすばらしい場所に出会いました。
答えのない問いとともに湧水に惹かれているのですが、その周囲を大事に守ろうというヒトの気持ちがなければ守ることはできない、ということは朧げながら見えてきました。
だからこそ、俗塵に汚れた心を洗い清める、清々と豊かな水の湧き出る泉のある場所となるのかもしれません。
地図では小さな河川しかないのに、こんなに豊かな水が湧き出る場所でした。
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