米のあれこれ 11 稲

夏の水田の風景は、また格別の美しさです。

飯田線の車窓から見えた水田も幻想的でした。

そして半月もしないうちに、今度は北上川周辺の水田をずっとずっと眺めるという、贅沢な時間を過ごしました。

 

仙台から東北本線に乗って数分ぐらいで、締め切ってあるはずの車内にどこからともなく稲の香りがし始めました。

夏休みに祖父の水田の周りで遊んだ時の風景がこの香りとともに思い出されてきます。

半世紀以上も前なのに、半世紀の時の流れを感じさせない風景です。

 

少しだけ違うのは、私が子どもの頃や1980年代に東南アジアで見た水田はまだ手で植えていたので、田植え後のあとは少し列が曲がっていていました。

最近は、定規でビシッと揃えたように綺麗な直線で稲が並んでいるのも壮観ですね。

 

谷地の複雑な地形の隅々まで作られているさまざまな形の棚田も、いったん田植えが終わると、全体の風景を整然としたものに変えていく魔術のようです。

 

どの地域も水田地帯は、整然という表現がふさわしいほどに統一された美しさです。

 

田植えが終わったばかりの稲は頼りなさそうだったのに、少しずつ株を増やし、根を張り、7月から8月ともなると隣の稲と区別がつかないほど密集し、水田の地面が隙間もないほどの株に成長しています。

小学校6年生から高校生まで過ごした地域では、7年間、この稲の変化を見続けていたはずなのですが、こんなに密集して増えたら窒息してしまうのではないかという様子が、今年、車窓を眺めていて初めて目に入りました

こんなに水田の中で密集して育つのですね。

もう少し隙間があるイメージでした。

 

柔らかな葉が風にそよぐ風景と稲の香りにばかり惹きつけられていたけれど、肝心の稲のことをほとんど知らずに来たのでした。

 

 

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