再就職のためのリスキリングの記事に「エキスパート」のコメントがありました。
リスキリングに関する誤解が、さらに誤解を生むことになりそうなので、いったん定義を整理してみたい。
ここ数年でよく耳にするようになった「リスキリング」ですが、私には非正規雇用が増えたり解雇が簡単に行われるような社会になりつつある中でそのための企業支援と受け止めていて、いつ頃からこの言葉がどんな背景で出てきたのだろうと気になっていました。
それで言葉の定義を知る機会になりました。
(1) アップスキリング→業務に必要な知識やスキルを手に入れること
(2) リスキリング→新しい職業に就くために、新しい知識やスキルを手に入れること(転職とは限らない)
(3) アウトスキリング→リストラ対象となった従業員が、成長産業への就職に役立つ知識やスキルを手に入れること
(4) リカレント教育→仕事と切り離して学び直すこと(生涯学習)
したがって解雇に関わる「学び直し」で考えるなら「アウトスキリング」ということになるだろう。しかし将来新しい職業(社内、社外関係なく)に就くための「リスキリング」こそが日本企業の生産性アップ、安定雇用にもつながることは、もっと広めてもらいたいと思う。企業を本気にさせることも政府の役割であるから。
へ〜、いろいろな「スキリング」があるのですね。
*「経験を継続させる大切さ」を知ってしまうと後戻りはできない*
20代とか30代の頃だったら、この新しい考え方や言葉の定義がそのまますんなりと頭に入ってきたかもしれません。
なんといっても根拠のない自信に満ちて、前途洋々の人生を思い描いていましたからね。
ところが10年20年と仕事を続けて新人から達人級のレベルを知ってしまうと、もはやこんな簡単なことじゃあないのにと一蹴できる定義だと思えるようになりました。
たとえ同一の仕事内容でも職場が変わるとまた一から新人レベルですし、同じ国家資格でも医療の中の専門性が広いのでやはり経験を積まないと太刀打ちできません。
つまりは、リスキリングなんて想像上の専門性でしかなく、現実はやはり経験を積むためにできるだけ長く仕事を続けられる職場環境が大事ということですね。
*理論化を急ぐと底が浅い*
なんだか圧倒される「エキスパート」のコメントですが、やはり世の中には達人級のものの見方ができる人もたくさんいらっしゃるのだと思います。
例えば、こんなコメントです。
リスキリングといえば聞こえはいいが、最近区役所・税務署の窓口職員など、非正規契約職員が当たり前になって、基本的な知識や経験が圧倒的に欠如していて非常にもどかしい思いをすることが増えた。経験に基づく知識というものが確かにある。雇用の流動性の犠牲となるのは雇用の不安定化・所得の低下と同時にそういった高度に専門的な知識の共有という側面もある。慎重な議論が必要だ。
鶴見良行さんのあまり理論化を急がない方がよいを思い出しました。
一見、理論化されたように見える内容は、簡単に底が見えてしまうのですよね。
*その定義で誰の利益になるのか*
こういう一見学問っぽい定義は社会にどんな利益があるのだろうと考えていたら、「『小泉進次郎首相』想定するならリスキリング、ライドシェアを材料視 『KIYOラーニング』『ディー・エヌ・エー』などに追い風」という記事がありました。
小泉氏は自らの政策として『解雇規制の見直し』を打ち出しています。一部では会社都合による解雇が増えるのではないかと懸念されたものの、「大企業に限ってリスキリング(学び直し)や再就職支援の強化などを行うもの」と説明を加えています。
株式市場ではリスキリングが材料視される可能性があります。個人向けオンライン資格講座を手掛ける「KIYOラーニング(7353)」、企業向けに講師派遣型研修や公開講座位を手掛ける「インソース(6200)」などに追い風となりそうです。
(夕刊フジ、2024年9月21日より抜粋)
題名だけだと何の話かわからなかったのですが、なんだ資格商売や研修ビジネスへの投機の話ですか。
研修会に出ると勉強した気分になりやすいですからね。
誰もが「教える人」になりたがり、いい加減な知識を伝えることで小金が回るのは堅実ではない仕事のような気がしてきました。
そして最近の政府の掲げる政策がこれじゃあないと、なんだか冷たく感じる理由がわかるような気がしてきました。
ああ、わかった。「生活支援のパッケージ」って、「研修業、資格商売業そして人材派遣業が一体になったプラン」ということだったのですね、きっと。
何だか、自分の人生を切り売りされている気分ですね。
専門性が高いというのは、こういう理論ぽいものにだまされない実力とも言い換えられるかも知れませんね。
「専門性とは」まとめはこちら。
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