米のあれこれ 121 「日本の米を日本の人に食べてもらいたいと思って作ってきた」

昨日の記事の下書きを書いた後、何百年とか千数百年という時間をかけて水田を作ってきた風景を見にとある地域へまた遠出に出かけていました。

全国津々浦々の田んぼが元気になる季節ですからね。

 

宿泊先の朝、テレビで美しい水田地帯の番組がありました。

「長い水路をつくり、太陽で温めてきた。大地の恵みに感謝。水路をつくってきた先祖に感謝」と穏やかに話される様子に、三島の中郷温水地と用水路を思い出しました。

 

別の場所では、江戸時代に開墾した田んぼの畦にツツジを植えてきたものが、この時期になると真っ赤に幻想的な風景になっていました。ほんと、ダリアが好きだった祖父のように農家の方々は花も大事にしますね。

そしてその風景を独り占めして田んぼを眺めながらラジオ体操をされていました。ああ、うらやましいことです。

 

つぎに、終戦後に樺太から引き上げてきて開墾し、試行錯誤のあとアメリカのとうもろこしがあっていると栽培し始めたという壮観な風景が映し出されました。

頑張って作っても50回の世界で、会心の出来はどれだけあったのでしょう。

こうした忍耐強さと努力があるからこその、田園風景の整然とした美しさなのだと思いました。

 

夕方の放送では、この混乱で突如として生産量を増やせという雰囲気に変わったことに戸惑っている米農家のインタビューがありました。

飼料米から主食用への転換といっても、米が安い時に飼料米として補助金をもらったり、飼料として米を買ってくれた畜産業のかたに申し訳ない」と静かに語られる様子に、ずっと時代の波に翻弄された葛藤を感じました。

手のひらを返して米を増産して輸出しろとか、安く米を食わせろ、輸入しろという雰囲気に、怖いのは人間とつくづく思いますね。

 

そしてまた静かにこうおっしゃられていました。

「自分たちは日本の米を日本の人に食べてもらいたいと思って作ってきた」と。

まさに「日本人は米を食べ続けてきた」ではなく「食べたいと思い続けてきた」、そんな社会を実現させてきてくださったのですからね。

 

やはりその仕事を続けてこられた方にしか出てこない言葉だし、全国版のニュースではうまく伝わっていない思いをきちんと記録してくれたこのテレビ局にも感謝しながらしんみりと番組を見ていました。

 

さて、次の日、こんなニュース記事がありました。

石破首相 コメ問題「史上最低の農林水産大臣とめちゃくちゃ言われた」 TVで訴え「本当に正しかったですか?」

(デイリー、2025年5月11日)

 

石破首相が11日、フジテレビ「日曜報道 THE PRIME」に生出演した。

「ここ50年ぐらい、世界中が米の生産を増やしてきた。中国だってアメリカだってインドだって、世界全体で3・5倍になってる」と指摘し「日本だけ米生産を減らしてきた。本当に正しかったですか?ということです」と述べた。

「高齢化が進み、人口が減り、だから米の生産が減っても仕方ないんだ、という考え方をもう1回立ち止まって考えてみるべき」とした。

海外でも日本米が人気だとし、「国土狭い、農地面積が小さい、以上おしまい、からは脱却しないといかんじゃないか」とした。

「ここ何十年、日本の農業は決して強くなっていない」と指摘。橋下徹氏が「守り方がおかしかったのではないか」と聞くと、「そこは自分も農林水産大臣をやってきた者として反省しなきゃいかんこと」と述べた。

一方で「私、農林水産大臣をやってた時に、もう生産調整やめと言って」と、おそらく同じフジの朝番組で発言したはずだとし「それは史上最低の農林水産大臣だと、めちゃくちゃ言われましたからね」と語った。

 

「日本のおいしい安全な米を世界に提供するのは、日本がやるべき国際社会に対する責任じゃないか」とした。

(強調は引用者による)

 

 

農林水産大臣になったのは2008年のようですが、当時世界ではインディカ米が主流の時に「日本のおいしい安全な米を世界に供給する」と考えたとしたらかなり先見の明があると言えるかもしれませんが、むしろ米というのは日本に残された最後の保護貿易という考え方であればつじつまが合うのかもしれませんね。

 

たぶん本音は、「米を輸出することよりも、米を輸入した分その見返りに工業製品を輸出しやすくする」あたりでしょうか。

ずっとそんな政治経済がこの国では続いてきましたからね。

 

 

首相が中学生まで過ごした鳥取県八頭郡を地図で眺めてみました。

千代川の支流が複雑に流れ込む谷津の地形に、息を呑むように水田が広がっています。

どんな水路の歴史があるのでしょう。

「地元の人にそして日本の人に、美味しいお米をお腹いっぱい食べてもらいたい」と田んぼを維持されてこられた方々の手によるものではないかと想像しています。

 

 

*おまけ*

この「米不足」の先行きの見えない中とふだん買えないくらい海苔が高騰しているというのに、国内でおにぎり屋さんがブームだという驚くニュースが。

どこかでだぶついていたお米でしょうか。

最近、「〇〇ブーム」と持ち上げられ、2~3年もすると商店街から消えていく食べ物が増えましたね。落ち着かない街になりました。

裏にはどんな流れがあるのでしょう。

 

 

 

 

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