事実とは何か 116 パンデミックの終息とは

医療機関で働いていると「決してコロナ禍が終わったのではなく、変化しながらまだその最中」ということを実感します。

 

今年の2月ごろも、急に妊産婦さんのCovid-19陽性の方が増えました。若い世代ということもあり、大事には至らずに済んでいます。このところコロナの増減は、夏と冬に限局してきたのかなという印象ですが、その代わりにさまざまな「かつては主に小児の感染症」などが流行して妊産婦さんや胎児や新生児を脅かしている感じです。そのため、産科で推奨する予防接種が増えました。

 

これが「未曾有の感染症による長期にわたる混乱」なのだと実感しています。

マイコプラズマとか季節外れのインフルエンザとか大人の百日咳とか「普通の風邪」とか、通勤時に密集する駅や電車内での飛沫を避けるためにマスクは手放せないのですが、ゴールデンウィークの後半あたりから電車内で咳こむ人が増えてちょっと緊張しました。

 

でもニュースにもならないので、何がどう流行しているのかしていないのかはよくわからないままでした。

 

5月20日には「WHO パンデミック条約全会一致で採択 新型コロナの教訓踏まえ」(NHK)というニュースがありましたが、「教訓踏まえ」というぐらいですから総括かのような内容ですし、どちらかというと「アメリカはWHOの脱退と条約への不参加を表明」という政治・経済的な動きに目がいってしまいました。

 

 

*日本のメディアでは触れていないことが起きている*

 

ところがその翌日に、久しぶりに新型コロナのニュースを見ました。思わず日付を確認してしまうほどです。

 

新型コロナがまた尋常ではない…タイで2週間で5万人感染、香港で30人死亡

中央日報、2025年5月21日)

中華圏を中心に広がっていた新型コロナウィルス感染症(新型コロナ)の再拡大の様相がタイでも本格化した。最近2週間の間、累積感染者が5万人に迫った。香港では1ヶ月間、新型コロナで死亡した人が30人に達した。

19日、タイ疾病管理局(DDC)は11~17日、新型コロナの感染者が3万3030人だと発表した。前週(11万6000人)比2倍以上急増した数値だ。先週、感染者の中では1918人が入院治療を受け、2人が死亡した。地域別では、首都バンコクの感染者が6290人で最も多く、年齢別では30代の患者の割合が最も高かった。

拡大の背景としては4月に開かれたタイ最大の祭り「ソンクラーン」が指摘される。水掛け、祭りを含む大規模な集まりと人口移動がウィルスの拡大を煽ったものと分析される。バンコク市はワクチン接種を拡大し、病床確保に出た。市民にはマスクを着用し、疑いの症状が現れたら検査を受けることを勧告した。タイの保険当局は現在の状況が統制可能だという立場だが、現地の医療界では「感染者が11週連続で急増しており、流行が長期化する可能性がある」という懸念の声が上がる。

中華圏も深刻な状況だ。香港では最近4週間、新型コロナ関連の死亡者が30人に達し、感染の割合は13.7%で1年ぶりに最高を記録した。公共病院の小児病棟は、ワクチンを接種していない児童患者でいっぱいだと、サウスチャイナ・モーニングポストが伝えた。中国本土では新型コロナの陽性率が3月末7.5%から5月初め16.2%に急騰した。シンガポールも今月に入って感染者が28%、入院者は30%増加した。

ただ、中国では再拡大の状況が6月末ごろ終息するだろうという見方が出ている。中国感染症の最高権威者とされる広州呼吸健康研究院の鍾南山院士は19日、南方日報とのインタビューで「今回流行するXDV変異ウィルスは感染力は強いが、病原性は比較的に弱い」とし「(拡大傾向が)計6~8週間続く」と明らかにした。鍾院士は「感染初期の症状は喉の痛み、咳、疲労感などでインフルエンザと類似しており、全般的に予防と統制が可能なので恐る必要はない」としながらも「65歳以上の基礎疾患がある場合には迅速な治療が必要だ」と強調した。

新型コロナがインフルエンザのように季節性で流行しているという世間の主張に対しては「流行期間が気候と関係があるという証拠はない」とし「消えることはないだろう」と見通した。

 

タイや中国では流行が再拡大していたこと、香港では死者まで出ていたことを初めて知りました。

祭りと感染拡大、新型コロナがヨーロッパへ広がった理由を思い出しました。

 

 

*未曾有の感染症終息には時間が必要*

 

 

この記事以外に、「中国でコロナの感染拡大、ピークは5月下旬かー中国メディア」(レコードチャイナ、2025年5月19日)、そして「中国・香港・シンガポールに続きタイで新型コロナ再流行、現地医療関係者の間で懸念の声」(朝鮮日報、2025年5月21日)の記事がありましたが、日本のメディアでは見かけませんでした。

 

今でも新型コロナ関連のニュースには「新型コロナなんてなかった、対策はやりすぎだ」とコメントが書き込まれるので、ほんとうに未曾有の状況で社会が落ち着くまでには時間が必要そうですね。

 

 

戦争にしても、自然災害やこうした未曾有の感染症拡大にしても、市民の心はなかなか混迷から抜け出せないので、事実だけを淡々を追うということも難しくなるのかもしれないと思いました。

 

 

 

 

*おまけ*

 

今回のパンデミックはまだ最中なので教訓を得るには時期尚早かもしれませんが、後の世から見たら「なんでそんな時にそれをしたのか」という失敗として映るかもしれないですね。

 

まだ終息していないのに観光客を増やすことを優先するとか、国民が未曾有の中で生活を立て直し事業を立て直している最中に、次から次へとこれじゃないという政策や制度を大きく変更させるとか。

健康保険証を廃止したり、分娩を健康保険にしようとか無痛分娩を無料にしようとか、現場からの問題解決として上がったものではないことがいつの間にか決められていきました。

医療機関はコロナで体力を削がれた上に、青色吐息でまだ予測不能感染症の対応に直面しているのですけれど、ね。

 

そうか、こういうパンデミックの最中というのは、強権的に物事を推し進めやすい時と言えるのかもしれない。世の混乱に乗じてという感じ。

 

そうそう、「コメの問題」に気を取られていると、また何かが動き出していることを見失う可能性もありますね。目をしっかり開けておかなければ。

 

 

 

「事実とは何か」まとめはこちら

新型コロナウイルス関連の記事のまとめはこちら

失敗とかリスクについてのまとめはこちら

骨太についてのまとめはこちら