シュールな光景 54 「それをした場合としなかった場合」

ネットニュースにあまり聞き慣れない医療の話が流れていきました。

内容を読むと一見医学的な内容なのでそうなのかと一瞬「信じそう」になりましたが、それほど有効性が検証されたのであればすでに通常医療に組み込まれているのでは、とちょっと踏みとどまりました。

 

1992年に生まれた「科学的根拠に基づく医療」という言葉によって、それをした場合としなかった場合の臨床試験方法や考え方が整理されました。

そしてあらたな方法が確立すればそれに置き換えられる、少なくとも世界共通の土台ができた感じです。

 

と同時に、あの時代に著名な人が言ったから「効果がある」「正しい」というパターナリズムのくびきからも解放されたと思っています。

思いつきの仮説をどんな有名な人が発表しても、科学的な手順を踏まなければ信頼できるレベルとは認められない時代になりました。

 

それでそのニュースからは距離を置くことができました。

 

 

*久しぶりにあっちの世界に*

 

時々見かけるその「有名な人」の記事のタイトルは人を罵倒する言葉が入るので読むことはほとんどないのですが、最近、医療の話もするので何があったのだろうと思ってはいました。

その名前を聞くと、むしろ現在の相場師気質の人が増えて政治や経済を混乱させている時代の始まりの頃を思い出すいろいろと有名な人でしたからね。

 

で、その医療関係っぽい名前の協会を検索してみたところ「腸活」「キレイレポート」といった言葉が目に入ってそっと閉じましたが、理事長のWikiを読むと「推奨カリキュラムのセミナー開催」「協会認定資格の発行」「美容・民間療法のチェック機構」など書かれていたので、ちょっと興味が湧いて、その協会ホームページを隅々まで読んでみました。

 

10年ほど前でしょうか、ヨーグルトのパッケージに「お通じのため」とか「腸に良い」と書かれるものが増えて、あまり触りたくないし目にしたくないなあと思っていました。

それがどんどんと広がり、「腸活」なんて料理本のタイトルにまで書かれるし、CMでも盛んに「腸活」「お通じ」と耳に飛び込み、ネットニュースでもやたらと腸の図が目に飛び込んできます。

できればもう少し控えめにしてほしいけれど、今、「腸」ブームなんですかね。

 

その協会の役員のプロフィールにも、「看護師として3年間勤務する中で、「腸」が子どもの生死において重要な関連があることに気づき、腸の研究に没頭」とか、「腸セラピー」をしている看護師さんとか・・・。

思い込みと妄想が専門用語の形で入ってくると、引き返すのは大変ですからね。

 

 

*時代は繰り返す*

 

広告には「酵素玄米」「オーガニック」そして「アロマ」とか。

人はちょっとおしゃれで進歩的な雰囲気に弱いですからね。

まあ趣味でする分にはかまわないけれど、医療従事者がハマるとバイブル商法資格商売の広告塔になってしまうので要注意ですね。

また時代を繰り返しているようです。

 

1990年代に「科学的根拠に基づく医療」と同じ時期にインシデントを認め報告し、再発防止に役立てる仕組みが浸透していきましたが、誤った知識を広げた責任をどうするかはなかなか確立しませんね。

虚業や妄想の世界にリスクマネージメントなんて通用しないですからね。

 

私にはあっち側の闇の世界に見えるのですが、向こうでは「社会の歯車になるなんてダサい」「人とは違う自分、輝いている自分」に見えるのでしょうね。

いつの時代にも同じような人が出現していたことに気づいて赤面するのはもう少し後でしょうか、それとも引き返せずに信念を持ったまま土に還るのでしょうか。

 

なんだかシュールですね。

 

 

 

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