2015-09-01から1ヶ月間の記事一覧

育児用ミルクのあれこれ 33 <「母乳並みのミルクの誕生」>

今回も「母乳が足りなくても大丈夫」(二木武・土屋文安・山本良郎氏、ハート出版、平成9年)を参考に、戦後、乳児用ミルクについての研究によって乳児にとってどのようなベネフィットがあったのか紹介したいと思います。 「母乳並みのミルクの誕生」(p.113…

乳児用ミルクのあれこれ 32 <乳児用ミルクの改良の変遷>

今回も「母乳が足りなくても安心」(二木武・土屋文安・山本良郎氏、ハート出版、平成9年)から、乳児用ミルクの変遷を紹介しようと思います。 「第二次大戦後の進歩」の中で、乳児用ミルクが大きく3段階に分けて改良されたことが書かれています。 長いので…

乳児用ミルクのあれこれ 31 <ミルクに関する「事実」とは何かー夏季熱>

こうして乳児用ミルクのここ一世紀の変遷をみるだけでも、今、ミルク缶をパカッと開けてすぐに新生児に安全に飲ませるミルクを作れることはなんとすごいことだろうと思います。 「母乳栄養に失敗」「人工栄養に失敗」、そのどちらも乳児の生命に直結すること…

乳児用ミルクのあれこれ 30 <安全優先のための計画授乳>

私が看護学生だった1970年代終わりの頃の産科病棟は、新生児室に赤ちゃんを預かり3時間ごとに授乳をする母児別室、規則授乳でした。 なぜそういう方法なのかあまり深く考えることなく、教科書にも「ミルクの消化時間が3時間」ぐらいしか書かれていなかったの…

乳児用ミルクのあれこれ 29 <「育児用乳製品の店」があった時代とは>

先日、マツコ・デラックス氏の「夜の巷を徘徊する」という番組で、葛飾区の立石仲見世の様子が放送されていました。 その中で目を引いたのが、「育児用乳製品の店」という古い看板がそのまま残されていたお店でした。 検索すればけっこうそのお店の写真が出…

乳児用ミルクのあれこれ 28 <人工栄養と腸内細菌について>

「帝王切開で生まれる」からちょっと横道にそれて、久しぶりの「乳幼児用ミルクのあれこれ」です。 前回の記事までで引用した「帝王切開と新生児の腸内細菌叢」という論文に、「母乳栄養児と人工栄養児における糞便中の菌叢の推移(Yoshiokaら、1983)」とい…

ミズヒキ

秋の気配とともに、私の中で存在感を増すのがミズヒキです。 漢字で検索するとこの植物の語源になった水引しか出てこないので、この植物の名前はカタカナ表記しかないのですね。 あのシュッと長く伸びた茎にポツポツと赤い花がつく姿が、こどもの頃からなん…

帝王切開で生まれる 9 <「帝王切開出生児に理想的な腸内細菌叢を定着させるには」より>

「周産期医学 特集 帝王切開ー母体と新生児に与えるインパクト」(2010年10月号、東京医学社)の「帝王切開と新生児の腸内細菌叢」という論文の最後の部分を紹介します。 「帝王切開出生児に理想的な腸内細菌叢を定着させるには」として以下のように書かれて…

帝王切開で生まれる 8 <「帝王切開分娩と腸内細菌叢」より>

引き続き、「周産期医学 特集 帝王切開ー母体と新生児に与えるインパクト」(2010年10月号、東京医学社)の「帝王切開と新生児の腸内細菌」について紹介していきます。 <「帝王切開分娩と腸内細菌叢」> 帝王切開で出生する新生児は産道を通過するという過…

帝王切開で生まれる 7 <早産児と正期産児の葛藤と矛盾>

前回の記事に引き続き、「周産期医学 特集 帝王切開ー母体と新生児に与えるインパクト」(2010年10月号、東京医学社)の「帝王切開と新生児の腸内細菌叢」を紹介しながら考えてみようと思います。 <「腸内細菌叢の新生児期の役割」> 前回の記事で紹介した…

帝王切開で生まれる 6 <「帝王切開と新生児の腸内細菌叢」より>

「周産期医学 特集ー母体と新生児に与えるインパクト」(2010年10月号、東京医学社)の中に、「帝王切開と新生児の腸内細菌叢」という論文があります。 今回はこの論文を主に紹介してみようと思います。 長くなりそうなので何回かにわけながら、それぞれの項…

水のあれこれ 25 <相対的と絶対的>

プールでゆるゆると泳ぎながら、時々プールの中の最大多数の最大幸福とか一回性と再現性なんてことを考えています。 いつもではなく、時々です。 いつもはだいたい「泳ぎ終わったら、今夜は何を食べようかな」とか「ビールにしようか缶チューハイにしようか…

帝王切開で生まれる 5 <産道を通過しないことによる違い>

帝王切開で生まれる時には産道による胸郭への刺激がないために出生後の呼吸障害が起こりやすいかどうかについては、在胎週数の影響のほうが大きいのかもしれません。 それ以外に、胎児から新生児へと変化する過程で、帝王切開と経膣分娩で異なる状況にはどの…

帝王切開で生まれる 4 <帝王切開と新生児一過性多呼吸>

「産道」を通らずに帝王切開というバイパスを通って生まれることで、出生直後には何か影響があるのでしょうか? 早産についてはかなり状況が違うので、今回は正期産での帝王切開について考えてみたいと思います。 経験的に、「帝王切開の赤ちゃんは一過性多…

かかとをつかんで生まれる

20代で犬養道子さんの本に出会い、30代に入る頃から旧約聖書と新約聖書を通読し始めたことは「聖書は失敗学」の中でも書きました。 犬養さんの「旧約聖書物語」といういわば手引書のような本がなければ、おそらく旧約聖書を読もうという気力はでなかったかも…

食べるということ 5 <おいしそうに食べる>

楽しみにしていた「孤独のグルメ」のSeason5が始まるようです。 それに先駆けて、先週から「傑作選」を放送しています。 本当に、おいしそうに食べますねえ。 そして時にはがつがつと食べているのに、見ていて不快にならないのはなぜなのだろうと松重豊氏の…

葛藤

父の面会の道すがら、秋の香りを感じるようになりました。 実際には8月初旬頃からふと秋の香りがしていて、葛の花の香りが強くなり始めます。 うだるような盛夏なのに、日差しが黄色みを帯びてくるように感じたり、草花の香りが変化し始めると、8月の初め…

帝王切開で生まれる 3  <産道とはなにか>

帝王切開と経膣分娩の明らかに違う点が、産道を通過したかしないかの違いであり、それは多くの人が漠然と理解していることではないかと思います。 この「産道を通る」ということは、具体的にどういうことなのでしょうか。 こちらの資料に書かれているように…

帝王切開で生まれる 2 <生まれる直前の胎児心拍モニタリングがない>

お母さんのお腹が切り開かれた部分から、赤ちゃんの体の一部が見え始めます。 頭位であれば髪の毛とともに頭の一部が見えますし、骨盤位であれば赤ちゃんの腰のあたりから見え始めて最後に頭が出ます。 ほんの一瞬の静寂のあと、赤ちゃんの産声が聞こえます…

帝王切開で生まれる 1 <生まれ方で差があるのか>

「帝王切開で生まれる」 人間が生まれる方法には大きく2種類あって、ひとつは吸引分娩や鉗子分娩も含めた経膣分娩で、もうひとつは帝王切開です。 この差は何かあるのだろうか。 胎児から新生児になる決定的とも言える瞬間に、この分娩方式の違いは何か影響…

帝王切開について考える 32 <小まとめ>

こんさんからいただいたコメントがきっかけで、帝王切開についての記事を書きました。 ここ半世紀あまりの帝王切開についての考え方の変化をあらためて考える機会になりました。 私が助産師になった1980年代終わり頃は、まだエコーの診断技術がようやく積み…

「平和を知らなかったから。子どもの頃から」

8月31日に放送された「陸軍少年戦車兵学校〜少年たちがあこがれた戦争の録画を見ました。 かつての少年たちは現在90歳前後で、ちょうど私の父と同じ世代です。 戦時中、少年たちのあこがれの学校が静岡県富士宮市にあった。「陸軍少年戦車兵学校」。昭和16年…

食べるということ 4 <自分の中の変なこだわり>

自分の中でどうしてそういう行動になるのだろうと、未だにどうしても解せない部分があります。 これまでもブログの中でいろいろと食べ物の話を書いてきたように、東南アジアやアフリカの辺境の村に寝泊まりしてその家族と同じ食事を食べたり、市場の中の食堂…

食べるということ 3 <こどもがひとりで食べる>

私の父は定時には終業する仕事でしたから、子どもの頃から夕食は6時に家族全員そろって食べていました。 友だちも官舎に住んでいる同じような家庭環境が多かったので、夕食というのはそういうものだと思っていました。 電車通勤していると夜8時台9時台に帰…

帝王切開について考える 31 <帝王切開の胎児適応>

帝王切開からの回想が続きますが、今日はその中でも帝王切開の「胎児適応」についてです。 1960年代あるいは1970年代頃までの産科施設では帝王切開の「胎児適応」さえなく、母体救命優先であったことを考えると、その医療の進歩は驚くほどの速さです。 <198…

帝王切開について考える 30 <戦前から戦後の帝王切開についての文献より>

1980年代終わり頃に助産師になった当時、予定帝王切開でもあるいは分娩進行中に異常があって緊急帝王切開になっても、「あ、これでお母さん赤ちゃんともに無事にお産が終わる」と心の中ではほっとするところがありました。 その後は帝王切開にも10年やってわ…

気持ちの問題 8 <煽動されない>

父の面会から戻った日曜日、偶然つけたニュースでデモが行われたことを知りました。 ・・・というぐらい、日常の政治のニュースには疎い私です。 「あれだけの規模のデモを知らない人がいる」というのは、賛同している方々にはあり得ないほど政治や戦争につ…