周産期関係

母乳育児という言葉を問い直す 11 <母乳とむし歯>

先日の記事にべべごんさんからいただいたコメントにこんなことが書かれていました。(べべごんさんありがとうございます) 昔は小学生ぐらいまで飲んでた子もいたのよ〜なんて聞いた事もあったり、歯医者さんには寝るとき飲むと虫歯になるから早く止めた方が…

母乳育児という言葉を問い直す 10 <おしゃぶりと卒乳の類似点>

1ヶ月前後ぐらいまでの新生児期で、ミルクをあげている場合の悩みが「飲み終わったのにぐずっている」「まだ3時間たっていないのに欲しがる」といったあたりかもしれません。 ミルクをあげすぎてもいけないからと、このあたりでお母さん達はいつのまにかつ…

母乳育児という言葉を問い直す 9 <断乳と卒乳、そして乳離れの境界線>

当然過ぎるのですが、断乳も卒乳も母乳栄養に対して使うことが前提にある言葉です。 母乳授乳に関して必要から生まれた言葉なのですが、乳離れと同義語ぐらいの認識でした。 「母乳育児支援スタンダード」(NPO法人日本ラクテーション・コンサルタント協会、…

母乳育児という言葉を問い直す 8 <卒乳・・・より長く飲ませる方向へ>

経産婦さんに「上のお子さんが母乳をやめた時期はいつ頃で、どんな感じでしたか?」とよく質問するのですが、驚くのは大半の方が「記憶にない」という答えが返ってくることです。 せめて「何ヶ月頃までは吸わせていた」ぐらいは覚えているかと期待するのです…

母乳育児という言葉を問い直す 7 <「断乳」と「卒乳」>

自分自身の思考を形作ってきたのは、どのような言葉やきっかけがあったのだろうと思い返す作業を「記憶についてのあれこれ」や「行間を読む」などに書いているのですが、自分が「考えていた」と思っていたのはむしろ感情で取捨選択していたに過ぎなかったと…

行間を読む 32 <「バースプランというのは矛盾した言葉」>

うさぎ林檎さんの12月22日22:47のtweetから「書け」と指令がきたような気がして、「芸能人にも多い『自宅出産』は危険?母になる前に知っておきたい命のリスク」という記事を読んでみました。イギリスで自宅分娩を試みたけれども病院に搬送され、児は重症新…

母乳育児という言葉を問い直す 6 <「補充食を食べさせる混合哺育」>

私の体格は同世代、50代の日本女性の中では後ろから3分の1ぐらいです。 さらに身長が伸びた若い世代に比べると小さくなりましたが、まあ日本の中では中肉中背より少し大きいという感覚でした。 ところが1980年代から東南アジアで暮らした時には、私は現地…

母乳育児という言葉を問い直す 4 <母乳育児のための「補完食」>

「離乳食(補完食)」という記述を目にするようになって、「離乳食=補完食」で呼び方が変わっただけなのかと最初は受け取っていました。 ところが2007年に厚生労働省から出された「授乳・離乳の支援ガイド」にも「補完食」という言葉は使われていません。 …

母乳育児という言葉を問い直す 3 <離乳食と補完食>

少し間があきましたが、「母乳育児という言葉を問い直す」の続きです。 「母乳育児」という言葉の広がりとともに、新たに耳にする言葉が増えました。 そのひとつに「補完食」があります。 「離乳食(補完食)」とした記述もあれば、「離乳食と補完食は別であ…

母乳育児という言葉を問い直す 2 <「母乳育児」の定義はない>

周産期医学や周産期ケアの中で「母乳育児」という言葉が使われ始めたのですが、その明確な定義は無いようです。 「小児内科 特集 母乳育児のすべて」(東京医学社、2010年)には、冒頭の記事に「母乳育児とは」が書かれています。 その冒頭はこんな文章から…

母乳育児という言葉を問い直す 1 <「母乳育児」という言葉が使われ始めたのはいつ頃か>

「あまり理論化を急がないほうがよい」で鶴見良行氏の言葉を紹介しました。 もう一回こまかな事実をきちんと出していくことが重要なので、あわてて理論とか構造とかを立てる必要はないと思うのです。 理論化や方法論化を急ぐと、新たな言葉がたくさん生み出…

母乳のあれこれ 36 <母乳推進のためにお買い物券進呈>

日常生活というのは、マスメディアからの情報にかなり影響を受けていると思います。 医療現場も時にその影響を受けることがあって、「テレビや雑誌にこう書かれていた」とあわててやり方を変更するきっかけになることもあります。 こちらの記事で紹介した「…

目から鱗 2  <液状乳児用ミルク>   

今も私の勤務先では一日中、粉ミルクを調乳しています。 手を洗い哺乳瓶を準備し、赤ちゃんの口に入るまで時に数人の赤ちゃんの大合唱にせかされています。 あの大震災からもうじき4年になるというのに、また液状ミルクが実現する道は遠のいたのかとがっか…

母乳のあれこれ 35 <「母乳を与えることは社会階級のはしごを登るチャンス」>

1990年代に医療の中にも「科学的根拠に基づく医療」という言葉が広がりました。 「科学的とはどういうことだろう」とずっと逡巡してきました。 とりわけ、膨大な数の「科学的」「医学的」な装いの論文に圧倒されています。 2009年頃から「ニセ科学」という言…

母乳のあれこれ 34 <途上国以外のお母さんがターゲットに変わっていった母乳推進>

WHO/UNICEFが途上国の母乳推進を進めた結果は、「完全母乳率の高い国は、乳児死亡率が高い国と重なる」になってしまったのは素人目に見ても明かです。 ところが、その途上国の乳児死亡率を下げることが目的で1979年に出された「唯一の自然な育児方法は母乳に…

母乳のあれこれ 33  <「母乳のメリット」探し>

子牛のように母親の初乳を飲まなければ生きられないのとは違い、人間の場合には母親の母乳が胎外で生きるための絶対条件ではないことが、20世紀に粉ミルクの出現によって証明されたといえるのかもしれません。 さて前回の記事で、1970年代に途上国の乳児死…

母乳のあれこれ 32 <母乳推進の目的は何だったのか。どう変化したのか>

私は研究分野についてはよく知らないのですが、日々、多くの母乳に関する研究が地道に行われているのだろうということは想像できます。 たとえば、<母乳の冷蔵期間>に書いたように、搾った母乳は冷蔵庫で8日間も保存が可能で、その理由は「母乳中の貪食…

母乳のあれこれ 31 <何のための母乳なのか>

私自身、「乳児期に何を飲んで育ったのか」なんて気にせずにいました。 初めて気にしたのは、20代後半,助産師学生の時でした。 休暇で家に帰った時に何気なく母親に「私は母乳で育ったのでしょ?」と尋ねたら、あっさり「混合よ」と言われ、当時はがっかりし…

母乳のあれこれ 30 <「母乳で賢くなったり出世するのか」という研究>

久しぶりの「母乳のあれこれ」です。過去の記事は、いつもまとめてくださるうさぎ林檎さんのこちらをどうぞ。 (私のブログの目次をつくってくださるうさぎ林檎さん、ありがとうございます) 今日は、先日いただいたさとえさんのコメントから、書いてみよ…

カンガルーケアを考える 12 <責任ってなんだろう? カンガルーケア裁判について思うこと>

11月4日のニュースに「病院の責任、二審も認めず カンガルーケア訴訟」(共同通信)という記事がありました。 新生児を親が胸で抱くカンガルーケア中に呼吸が止まり後遺症を負ったのは、安全対策の不備が原因だとして、大阪府内の女児(3)と両親が同府富田…

産後ケアとは何か 27 <激しく泣く赤ちゃんを育てるお母さんへのケア>

出産して2か月になる豆腐メンタルさんから、9月21日と10月17日にコメントをいただきました。 豆腐メンタルさん、ありがとうございます。 そしてご本人の了承なしに本文で紹介することをお許しくださいますように。 豆腐メンタルさんのご相談は次のような赤…

助産師の世界と妄想 13  <野心的研究課題>

こちらの記事で紹介した中に「野心的研究課題」という言葉がありました。 これらは野心的研究課題ではありうる。しかし現時点では根拠は希薄である。筆者らに欠けているのはデーターに対する批判的な視点である。 いやあ、あるある。 助産師の世界ってそれだ…

思い込みと妄想 8 <お産トラウマというNHKの造語>

200年前の医学のレベルではいざ知らず、現代では荒唐無稽な話であると明らかになっても根強く残るホメオパシーも、「社会や人が求めるわかりやすい答え」が巧みに取り込まれているからいつまでも話題として蘇ってくるのでしょうか。 そのホメオパシーの動…

産後ケアとは何か 26 <周産期ケアマネージャがいたらいいな>

前回の記事で考えたことから、医療を基本とした産後ケアとは「妊娠・出産に関連した健康問題を、私的な領域にとどまらせることなく社会全体で継続して支援する」ものではないかと思います。 1950年代に「産後の休養の重要性」を社会に広げることから始まり、…

産後ケアとは何か 25 <産後ケアについての医療と代替療法の違い>

「産後ケア」という言葉自体がまだ定義されていないものであることはこちらで書きました。 同じ言葉でも「産前の体型と自信、免疫力と意欲、健康を取り戻し」と、周産期医療の中で考えている産後ケアとは違う意味が社会に広がっているのだと驚きます。 ただ…

産後ケアとは何か 24  <出産後の女性の継続的なケア>

しばらく産後ケアや産後の排泄のトラブルの話題から離れていました。 「産後のトラブルを考える」と「産後ケアとは何か」という二つのタイトルが同時に進んでいるのでわかりにくいと思いますが、今回はこちらでまとめた産後ケアの続きです。 「産後ケアとは…

産後のトラブルを考える 23 <産科医療補償制度の対象を拡大できないか?>

産科医療補償制度が始まってから、出産育児一時金にその掛け金が上乗せされて支払われるようになりました。 「産科医療補償制度の仕組み」に説明されているように、掛け金の3万円は妊婦さんとそのご家族が準備するわけでもなく、また分娩施設の利益になるわ…

産後のトラブルを考える 22 <産科医療補償制度ー無過失補償制度>

周産期医療の中での補償制度といえば、2009年に始まった産科医療補償制度です。 そのHPでは、妊産婦さん向けに以下のように説明しています。 お産の現場では、赤ちゃんが健康で、元気に生まれてくるために、医師や助産師などが大変な努力をしていますが、そ…

産後のトラブルを考える 21 <家族崩壊を防ぐための現実的な解決策>

前回までは、「気持ち」の部分からケアや産後のトラブルを抱えた家族について考えました。 妊娠・出産を機に予想もしなかったトラブルやケアの長期化を抱えることによる家族の崩壊を防ぐには心理的なサポートも必要ですが、気持ちの問題は人さまざまですから…

産後のトラブルを考える 20 <ケアーが必要になった人のパートナー>

これまでご紹介してきたようにさとえさんやあおばさんからコメントをいただいたことで、産後に排泄トラブルを抱えることになった方々のやり場のない思いを知る機会になりました。 それを読みながらもうひとつ気になっているのが、パートナーの方々のことです…