2016-01-01から1年間の記事一覧

数字のあれこれ 13 <分母が増えると>

父の面会に月に3回ほど行くようになってもうじき2年になります。 一勝九敗に書いたように、平日だけでなく土日も結構混んでいるので、相変わらず座席に座れるのはこの確率です。 それだけでなく、往復した回数(分母)が増えるに従って、アクシデントに遭遇…

気持ちの問題 29 <時間が必要なこと>

カンボジアの話題があったので、そうだまだ書きかけのこの記事があったと思い出しました。 だいぶ前になりますが、NHKのニュース番組の中で、カンボジアのポルポト時代の加害者と被害者の和解プロジェクトを紹介していました。 ニュースを見た印象としては、…

思い込みと妄想 34 <壮大な社会実験と現実の医療>

医療サイトのm3com.に「カンボジアに日本式病院 医療の海外展開」というニュースがありました。 日本医療の海外展開の一環として日本政府が設立を支援してきたカンボジアの病院が首都プノンペンに完成し、20日フン・セン首相らが出席して開院式典が行われた…

カンガルーケアを考える 17 <効果とリスクの矛盾した話>

あらためて産科医療補償制度報告書の「生後5分まで新生児蘇生処置が不要であった事例について」を読みなおしています。 「1. はじめに」にはまず、以下のように書かれています。 出生時に新生児仮死がなく、リスクが低いと判断された新生児であっても、新生…

コスモス

先日、父の面会に3週間ぶりに行ったら、もう秋の景色になっていました。 ノースリーブでも歩くと汗がでるぐらいの気温なのですが、田んぼには黄金色の稲穂が垂れ香しいほどの香りが漂い、トンボがたくさん飛んでいました。 どの花かわからないのですが秋を思…

カンガルーケアを考える16  <つじつまが合わない話>

以前は「カンガルーケア」とか「母子早期接触」というと、お母さんの胸の上に生まれたばかりの新生児を裸のまま「うつ伏せ」にして密着させるイメージでした。 ところが最近、とある助産院のホームページで、出産直後のお母さんの胸の上に赤ちゃんを上向きに…

「精神的には伸び盛り」

競泳の大きな国際大会が終わるたびに、いつも応援している選手が引退表明をするのではないかと少し戦々恐々とした気持ちになります。 そんな中で、「リオ五輪に"滑り込んだ"古賀淳也。「最速スイマー」の称号で東京目指す。」とありました。 そのNumber Web…

越えられる存在になり、引き継ぐ

ここ数日、私の心にはぽっかりと穴が空いた気分です。 とうとうこの時が来たのだなと。 でも、本当に松田丈志選手はさすがですばらしい集大成でした。 今年の日本選手権でメダルを取り続けて来た200mバタフライで4位になり、バタフライでのオリンピック4回出…

カンガルーケアを考える 15 <こんさんのコメントをまとめていきます>

これまでも、<こんさんの話を聞いてください>や<再び、こんさんのコメントより>で、こんさんのコメントをご紹介しました。 初めてコメントをいただいたとき、こんさんはおそらく起こった状況を受け止めるだけでいっぱいで、病院と話し合いをすることさえ…

ケアとは何か 17 <さて、死んだのは誰か。死化粧>

時々、池田晶子氏の本を読み返しています。 「事実とは何か」まとめに書いた「生きている実感がない」についても、池田晶子氏の本に「あ、この感じ」と表現された箇所があります。 私を考え、私を突き抜け、普遍に至る。これが形而上学(メタフィジカ)。も…

思い込みと妄想 33 <化粧の世界>

私自身は化粧をするのは冠婚葬祭の時ぐらいで、その機会さえ数年に一度あるかないかぐらいの頻度です。 必要な時に慌てて購入して、1回使ったら結局そのまま二度と使われずに廃棄を繰り返しています。 もったいないので、最近はリフィル(詰め替え用)のもの…

助産関係の出版についての記事のまとめ

1980年代初頭に私が看護師になった頃は、都内で医学関係の書籍を扱う大型書店でも、まだまだ看護関係の出版物は少ない時代でした。 その後1990年代以降、看護関係の出版社や出版物も劇的に増えました。 定期的にそういう大型書店の看護関係の書棚を眺めに行…

「つじつまのあれこれ」まとめ

「つじつまがあわない」 あまり私の人生の中では考えることも使うこともなかった言葉が、最近、とても現実味をおびて、しょっちゅう私の頭の中に登場します。 「辻褄とは、合うべき道理。一貫すべき物ごとの道理」 「自然なお産」とか院内助産やアドバンス助…

事実とは何か 12 <「その結果を引き受けてきた。それらがいかに不合理であったとしても」>

無介助分娩やプライベート出産のように、自らが選択したわけではないけれど、結果的に自力で出産することになってしまうことが、この現代の日本でもあります。 正確な統計はないので、あくまでも私個人の感覚ですが、数年に一人ぐらい病院に間に合わなくて自…

つじつまのあれこれ 8 <「自力出産」とは何か?>

「自然なお産運動」の人たちは本当にいろいろな言葉を思いつくものなのだなあというのが、「産み育てと助産の歴史」(医学書院、2016年)を読んでの感想です。 その中で使われていた「自力出産」はどのようなことを指しているのだろうと、気になっています。…

つじつまのあれこれ 7 <「自力出産」という危険な思想>

「自然なお産運動」では、助産師とくに開業助産師は産む人の味方であるかのように持ち上げられてきました。 そのキーワードが医療介入という言葉であるような印象です。 「無意味な医療介入」や「産む人の意思を無視した医療介入」のように。 ところがこの産…

つじつまのあれこれ 6 <我田引水>

前回の記事で、「産み育てと助産の歴史」(医学書院、2016年)の「第2章 自宅で産んでいた人〜農山漁村の体験者の語りから」では、産婆・助産婦が医療介入のないお産をする人として描かれていたり、反対にお産に不自然さをもたらした人としても描かれていま…

つじつまのあれこれ 5 <助産婦は医療側になったりならなかったり>

「自然なお産運動」では、産婆や助産婦・助産師の立ち位置がその時の文脈によって、医療側の人にされたり、女性側の人にされたりします。 「産み育てと助産の歴史」の第2章「自宅で産んでいた人々〜農産漁村の体験者の語りから」も、それが顕著に描かれてい…

カンガルーケアを考える 14 <誰がそれを望んでいるのだろう?>

m3.comの「医療ニュース」に「出産直後の抱っこに注意 脳性まひ予防呼び掛け」というニュースがありました。 生まれたばかりの赤ちゃんを抱っこするときは顔を横に向けてあげて、お母さんは体を起こすー。出産直後のベッドで母親が子どもを抱く「早期母子接…

事実とは何か 11 <過度の一般化>

m3.comという医療ニュースのまとめサイトで、「『もう女じゃなくなったのね』と言い放った看護師」という記事を見つけました。 読売新聞2016年8月24日の、「わたしの医見」に寄せられた投稿のようです。 東京都大田区 主婦 71 子宮筋腫が見落とされていた…

「目から鱗」まとめ

いつ頃からかわからないのですが、「目から鱗」という言葉への感じ方が大きく変化しました。 20代とか30代の頃まででしょうか。 「目から鱗」は、「すごい」という感嘆のニュアンスでした。 ところが最近では、どちらかというと「ああ、そういうことだったの…

境界線のあれこれ 70 <生殖と性欲と性犯罪>

産婦人科に勤務していると、生殖と性欲と性犯罪の境界線を毎日意識している仕事だと改めて思うこのごろです。 大半が生殖に関係することなのですが、望んでいない妊娠の相談や、ごくごくたまに性犯罪についての診療もあります。 婦人警官に連れられて、被害…

水のあれこれ 48 <水の記憶>

水に記憶があるなんて荒唐無稽な話だけれど、あったらいいのになと妄想していることがあります。 それはプール内での犯罪を記憶しておいてくれたらということです。 水の中の犯罪とは、特に性的な犯罪です。 数年に一人ぐらいですが、プールで挙動不審な人を…

目から鱗 10 <水にありがとう>

どのテレビ局か忘れたのですが、リオオリンピックのテーマ曲が「ありがとう」でした。 競泳のシーンとともに字幕に「テーマ曲『ありがとう』」と出たのを見て、「水」と「ありがとう」が結びついて私の気持ちはあっち側へ行ってしまったのでした。 「水から…

行間を読む 60 <「自然なお産運動」の終焉>

「産み育ての助産の歴史」の感想をひと言で言えば、今日のタイトル通りです。 本の目次を見ると、「自宅で産んでいた人々」「医療者が介入しない出産」「産まされるお産から産むお産へ」「ラマーズ法と自然出産運動」といった言葉が並んでいます。 著者のお…

行間を読む 59 <どちらが先見の明があったか>

こちらで紹介した「産み育てと助産の歴史」ですが、ざっと斜め読みした中でひっかかった表現で、この本は助産の歴史についての学問的な本ではなく、あくまでもあるイデオロギーの表明なのだろうというのが感想です。 「ひっかかった表現」についてはまた次回…

アロエ

コンフリーは記憶になくても、アロエはほとんどの方がご存知だと思います。 「ヤサシイエンゲイ」のアロエの説明では、明治期に日本に入って来たようです。 日本でもよく知られているのはアロエ・アルボレッセンス(A.arborescens)です。キダチロカイ、キダ…

コンフリー

今日のお題のコンフリーという名前に記憶があるとすれば、50代以上の年代の方でしょうか。 小学生の頃だったので、1960年代終わりから1970年代初めの頃だったと思います。 我が家の庭に、コンフリーが植えられていました。 母がどこからか聞いて来て、「体に…

目から鱗 9 <陰謀論>

こちらの記事で紹介した「時代が求める自律した助産師への期待」という論文に対して、助産師に感じる違和感がこの国の助産師教育を担っている人たちには根深くあるのだと思いました。 それと同時に、この論文の中で使われている「GHQ」に、「陰謀論」と言う…

思い込みと妄想 32 <「どこを切っても金太郎」からあっちの世界が広がる>

午前中から30度近い暑さにも負けずに、プールには元気なおばあちゃんたちが集まります。 更衣室でもプールでも、おしゃべりににぎやかなこと。 年齢とともに声も大きくなるので、聞いてるつもりはなくてもその会話が耳に入ってしまいます。 「Facebookとかイ…