言葉の意味
「監視行動」というのもとてもものものしいのですが、なぜ東日本大震災の時に突然「紙コップの授乳方法」が良いものとして広められたかというのも、前回までの記事で書いたような「母乳代用品、哺乳びん、人工乳首の寄付ははたとえ善意であっても、誤った援…
前回と今回のタイトルに「戦略」という表現があることに、戸惑うかたもいらっしゃるかもしれません。 母乳に関して「戦略」なんてものものしい表現ですよね。 でも前回の記事の中で紹介したように、WHO/UNICEFの「乳幼児の栄養に関する世界的な運動戦略」の…
昨年の東日本大震災の初期に、「災害時でも母乳で」「哺乳ビンでなく紙コップで」「母乳だけで授乳しているお母さんにはミルクを配布しないで」というメッセージをよく見聞きしました。 未曾有の非常時にそのメッセージからくる唐突感と違和感は何なのかと思…
災害発生時から24時間までをフェーズ0(ゼロ)と区分していることを2012-06-09 - ふぃっしゅ in the waterで紹介しました。 災害発生直後に避難してきた方を受けいれる状況はどのようなものでしょうか。 私自身は直接その受けいれ支援の経験はありませんが…
昨年の東日本大震災の直後わずか2〜3日だったように記憶していますが、ネット上には「災害時こそ母乳を」「出なくなることはない」「母乳は完全な栄養がある」「母乳は災害時の感染症を予防する」といったメッセージがたくさん出始めました。 それと同時に…
救援物資を必要とする災害とはどのような状況でしょうか。 豪雨や台風での一時避難から、昨年のような巨大地震、津波そして原発事故と複雑で広範囲な地域の長期化した避難までさまざまです。 そのような中で、家を失い避難所生活が長期化する方もいれば、自…
昨年の東日本大震災の直後から、ネットやtwitterで「母乳は吸わせれば出るからやめないで」「粉ミルクや哺乳瓶の配布は必要な人だけにして」といったメッセージが広がりました。 きっと多くの人は、粉ミルクを足すことがいけないと考えたのではなく「母乳を…
東京医学社から出版されている「周産期医学」2012年3月号は、「東日本大震災と周産期」という特集号でした。 昨年の3月11日の東日本大震災と翌日の福島第一原子力発電所の事故は、被災地域の規模、地震と津波そして原子力事故という被災状況の複雑かつ深刻さ…
今の日本の社会で、赤ちゃんを育てていらっしゃるお母さんたちの多くに必要なもの、それは「人の手」ではないでしょうか。 いぇ、本当に猫の手も借りたいというほどに。 母乳であれミルクであれ、授乳というのは時間がかなりかかるものです。 一人で家事も育…
母乳については「素晴らしい」という言葉では表現しきれないほどの巧妙さ、複雑さがわかってきましたし、反対に母乳のデメリットになり得る点もわかってきました。 それまでは個人的な感覚で「よい」と思っていたことがきちんとあきらかにされていくという、…
何度か記事を引用させてもらっている「小児内科」2010年10月号(東京医学社)の「特集 母乳育児のすべて」の中の、小児科医の先生が書かれた文を読んで感じたことを書いてみようと思います。 「母乳育児支援のポイント」の「はじめに」より、長くなりますが…
世の中には、人工栄養で子どもを育てることを選択されるかたがいらっしゃいます。 <母乳が感染経路となる疾患> 1980年代半ばにAIDSというウィルス感染による疾患が明らかになってきました。 感染した時点では症状もなく何年か経て免疫不全の状態に陥るとい…
本の題名は忘れてしまったのですが、昔から多くの国で出生直後から数日ぐらいの新生児のぐずりをなんとかしようとしていたことを読んだ記憶があります。 砂糖水を布に染み込ませてしゃぶらせたり、ある国では胎便を早く出させることがよいものとして下剤の効…
「なかなかおっぱいに吸いつけない」「授乳時の痛みやトラブル」でのフォローも、最初は本当に手探り状態でした。 今日はそのあたりの失敗談です。 ところでこの完全母乳のシリーズを書くきっかけになったのは、ニューヨークの「ラッチ オン NYC」という…
退院後のフォローとして関わった対象として多かったのが、「退院時に赤ちゃんが体重増加期に入っていない」「直接吸えない、乳頭痛が強いなどのトラブル」「第一子のときに母乳がうまくいかなかった不安」などです。 <退院時に赤ちゃんが体重増加期に入って…
自分自身の授乳支援の関わり方を振り返っての失敗談を続けます。 私が助産師になった頃は完全母乳という表現こそありませんでしたが、それでも「できるだけ母乳で」という雰囲気ができ始めていた頃でした。 <退院後のフォローで「母乳だけ」にならなかった…
母乳は吸わせ続ければ、多くの場合母乳だけで育てられるほど出るようになるのか? これが多くの人が知りたいところではないでしょうか。 私も助産師になったばかりの頃から、とてもこのことに関心がありました。 そして最近の私の中での答えは、YesでもありN…
ダナ・ラファエル氏の「母親の英知 母乳哺育の医療人類学」(小林登監訳、医学書院、1991年)の各章にはすべて、日本語のタイトルとともにこの「Only Mothers Know」という言葉が入っています。 各国でのフィールドワークの報告にも興味深い話がたくさんある…
ダナ・ラファエル氏の「母親の英知 母乳哺育の医療人類学」(小林登監訳、医学書院、1991年)の本に戻ります。 最終章「8章 母なる英知」では、ラファエル氏はフィールドワークを通して以下のようにまとめています。 適切な支援、十分な食糧、母乳が強制され…
「母性のゆくえ 『よき母』はどう語られるか」エリザベート・バダンテール(松永りえ訳、春秋社 2011年3月)の中で、ラ・レーチェ・リーグのインターネットサイトの英語版で、「母乳育児の十戒」が掲げられていることが書かれています。 十戒といっても、実…
表題の「母乳哲学の十か条」という表現は、前回の記事で紹介した「母性のゆくえ 『よき母』はどう語られるのか」(春秋社)の中で著者のバダンテール氏が、ラ・レーチェ・リーグが1985年に出した十か条を「母乳哲学の基本となる十か条」と書いているところか…
前回の記事で、ラファエル氏は「母子擁護グループの強圧的な行動」を批判していることを紹介しました。 ラファエル氏の著書の中にはグループ名は書かれていませんでしたが、国際的な母乳推進運動の中心になってきたのがラ・レーチェ・リーグ(LLL)というアメ…
途上国での乳児死亡率の増加に単純な原因(多国籍企業の粉ミルク販売促進)と単純な解決策(母乳推進運動)を求め、多くの人たちが途上国の女性や子どもたちの実情もしらないままに、さまざまな思惑がうねりとなり大きな力となり国際機関を動かしていきまし…
途上国での乳児死亡率の増加に対して、単純な原因(多国籍企業の粉ミルク販売促進)と単純な解決策(母乳推進運動)に答えを見つけて、調整乳反対運動と母乳哺育推進運動が広がっていくことになったことは前回の記事で書きました。 ラファエル氏は、「第7章 …
母乳推進運動の中で必ず出てくるのが、多国籍企業による粉ミルクの販売促進が第三世界での乳児死亡を高めたという話です。 2012-02-23 - ふぃっしゅ in the waterでも、日本ラクテーションコンサルタントの「母乳育児支援スタンダード」(医学書院、2009)の…
<「第7章 母乳哺育の政治学」 Only Mothers Know > ラファエル氏の設立した母乳哺育研究センターがこの母乳哺育の調査研究を開始した1975年当時は、発展途上国の母乳哺育や乳児について関心をよせる研究者はほとんどいなかったようです。 そういう時代に…
ダナ・ラファエル氏の「母親の英知 母乳哺育の医療人類学」は1991年に出版されました。 かれこれ20年以上も前に購入して、ずっと本棚においてありました。 当時は私自身も母乳にとても関心があり、「吸わせれば出るようになる」と書かれた書物に背中を押され…
こちらの記事で、ダナ・ラファエル氏の「母親の英知 母乳哺育の医療人類学」(医学書院、1991年)を紹介しました。 どのような経緯で、この「いきすぎた母乳哺育への警鐘」を鳴らすための本が書かれたかについて今回紹介したいと思います。 <自身の母乳哺育…
畝山智香子氏の食品安全情報blogに「ニューヨーク市保健省は母乳を与える母親を支援する"LATCH ON NYC(吸い着けNYC)"イニシアチブを開始」という記事がありました。 http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20120511 「新生児にとって『吸う』とはどういうことか」…
前回の記事にhaccaさんがコメントをくださいました。ありがとうございます。 haccaさんを担当した助産師の対応に対して、haccaさんが以下のように感じられたことを書かれています。 このような精神論で物事を見る、科学的な検証を避けるといった姿勢が助産所…