2012-01-01から1年間の記事一覧

「早期母子接触」ってなんですか? 1  <母子の当然の権利?>  2015年7月20日追記あり

今日から「医療介入シリーズ」に戻る予定でしたが、うさぎ林檎さんからの指令に応えて、10月17日に出された「『早期母子接触』実施の留意点」について書こうと思います。 えぇ、「黒い内容で行け」という指令だと認識しました。 <カンガルーケアと早期母子…

私とニセ科学的なものについてのあれこれ

自分自身を振り返ってみると、科学的な思考とは程遠い世界で生きてきたと思います。 むしろニセ科学的なものに積極的に近づいていたといってよいほどでした。 小さい頃から、宗教的な家庭で育ちました。 生きるということはどういうことか、死ぬとはどういう…

kikulog復活! つづき

私がブログを始めようと思った理由として、あちらこちらのブログに書き込ませていただいたコメントを、もう少し掘り下げて表現したいと思ったこともそのひとつです。 kikulogのコメント欄でのやりとりは、本当に目の前が広がったといえるような機会になりま…

kikulog復活!

何ヶ月ぶりかで、kikulogが復活して読めるようになりました。 http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/weblog/index.php?display=box コメント欄が膨大な量なので、パソコンで読むことがお勧めです。 琴子ちゃんのお母さんのブログ「助産院は安全?」で、…

医療介入とは 32       <陣痛計と子宮収縮剤、つづき>

現在の陣痛計は、2種類あります。 妊産婦さんの腹壁に直径8cmぐらいのトランスデューサーを当てる外測法と、ストローぐらいの太さのチューブの先端にトランスデューサーが付いたもので子宮内圧を直接測定する内測法の2種類です。 外測法の方が簡便であり、…

医療介入とは 31      <陣痛計と子宮収縮剤の開発 > 

陣痛促進剤と書くと、「危険」とか「不自然」という感情まで一気に呼び起こされてしまいそうな薬剤かもしれませんが、この薬剤によって生命の危機を乗り越えられた母子や無事に経膣分娩を終了できた母子はどれだけいることでしょうか。 今まで胎児心拍の測定…

医療介入とは 30  <CTGの普及と助産婦の「自然なお産」の時間的なずれ>

1980年代というのは、わずか10年間の間に病院での医療が大きく変化した時代だったのではないかという印象を強く持っていました。 血管確保のところで静脈留置針の普及について書いたのも、そのひとつです。 分娩監視装置に関しても、病院や診療所での普及…

医療介入とは 29 <RQ.分娩時胎児心拍数の観察は?>

「胎児が生きているか、死んでいるか」しかわからなかった時代から、分娩監視装置によって「胎児が元気かどうか」わかる時代に入ったのはそう遠くない30年ほどであったことを書いてきました。 今日は、「科学的根拠に基く快適で安全な妊娠出産のためのガイド…

医療介入とは 28 <分娩監視装置で広がった世界 続き>

陣痛がある程度規則正しくなってからの、陣痛と胎児心拍の関係を連続モニターで見る機会ができたことで、自分自身がまだまだ分娩経過で知らないことがたくさんあることを前回書きました。 今回は、その続きです。 <アクティブ・バースについて> 1988年に出…

医療介入とは 27 <分娩監視装置で広がった世界>

トラウベや携帯用ドップラーで心拍数を確認するだけではわからなかった胎児の世界が、分娩監視装置のグラフ化された記録から見えるようになったと思います。 たとえば前回の記事に書いた私の体験のような場合には、入院時にトラウベやドップラーだけで胎児心…

医療介入とは 26 <産婦さんの快適性と胎児の快適性>

分娩に携わっていると、日頃は心の奥底に封印しておきたい経験というものがあります。 私にとっては誕生という喜びを期待している場での死、です。 その場面を思い返すと、なぜあの時から自分はこうして生き続けているのかという罪悪感と、人はこうしてずう…

医療介入とは 25 <分娩監視装置  胎児の状態を連続して知るための唯一の機械>

<分娩監視装置と産婦さんの快適性> お腹に陣痛計と心拍計の大きなトランスデューサー(直径6cmぐらいで厚みも2cm以上あります)を2本の太いベルトで固定するわけですから、「産婦さんの快適性」を問われれば、身体的には快適とはいえない状態だといえるで…

医療介入とは 24  <「自然なお産」と分娩監視装置>

1970年代からの「自然なお産」の動きは、日本だけでなくイギリスやアメリカ、世界中のいろいろな国で高まっていたようです。 1980年代終わりの頃に「自然なお産」に影響され始めた私は、そういう各国の動きはある程度同じ段階で、同じ方向を向いていると思い…

医療介入とは 23 <CTGと助産婦、1970〜90年代の変遷>

1970年代初頭では大学病院でさえ、携帯用ドプラーでの胎児心音を聴取する程度であったのなら、一般の病院や開業助産婦はまだしばらくトラウベで耳での聴診方法しかなかったことでしょう。 そして、1970年代終わりに看護学生の実習で分娩監視装置(胎児心拍陣…

医療介入とは 22 <ドップラーとCTGのトリビア>

トラウベで胎児心音を聴取する時代からドップラーで聴取する時代への移り変わりというのは、もしかしたらただ単に機械化されたとか便利になったという次元の話ではなく、胎児の存在そのものへの受け止め方が社会の中で大きく変化したということではないかと…

医療介入とは 21 <胎児とはどのような存在だったのか>

私の助産婦学校時代の教科書の産科手術として、「胎児縮小術」が載っています。または「切胎術」と言います。 どのようなものだったのでしょうか? 近年産科学の進歩に伴い、比較的重篤な母体も保存および帝王切開術で容易に分娩が行われ、胎児死亡も著減す…

医療介入とは 20 <胎児生存を客観的に確認する方法>

少し間があきましたが、また医療介入について考えてみようと思います。 前回は「胎児の安全がわかるようになった時代」として、「『出てくるまで生きているか、元気か、死んでいるかわからない時代』もそう遠くない昔」だったのではないか、ということを書き…

これはないと思う 「助産雑誌 9月号」その4

「助産雑誌 9月号」の巻頭インタビュー「いのちをつなぐひとたち」は、河合蘭氏(出産医療ジャーナリスト)でした。 最初のページには、次のようなキャプチャーがあります。 これからは、ハイリスク出産にも助産師のケアが必要な時代 そしてインタビューは以…

これはないと思う 「助産雑誌 9月号」その3

私が助産師になってからの二十数年は、ちょうど「自然なお産」や「いいお産」の呼び声が高まっていく時期に重なっていました。 その動きは、病院の安全性に加えて快適性をという方向ではなく、医療介入をしないことが良いかのようなイメージの方向にむかって…

これはないと思う 「助産雑誌 9月号」 その2

「助産雑誌 9月号」は、「事例検討から学び、活かす」という特集でした。 「助産雑誌」医学書院 http://www.igaku-shoin.co.jp/jurnalPortal.do?jpurnalPortalId=665 お産の経過はどれひとつとして同じものはないことは当然です。 「こんな進みかたがあるの…

これはないと思う  「助産雑誌 9月号」

2012年5月10日の「助産師の世界1 <助産師に感じる違和感>」http://d.hatena.ne.jp/fish-b/20120510からだいぶ間が空きました。 タイトルではなく、「助産師の世界」をカテゴリーにして続編にすることにしました。 助産師向けの雑誌には、医学書院から出…

医療介入とは 19 <胎児の安全がわかるようになった時代>

私が助産師になった1980年代後半には、自然なお産を求める動きが日本でも高まって、国内外の書籍が数多く出版されました。 自然なお産に強い関心を持っていた私は、当時、必ず購入していましたが、現在手元に残っているのは数冊ほどになりました。 著者は助…

医療介入とは 18 <血管確保のまとめ>

RQ「分娩時にルティーンの点滴は必要か?」の結語の部分を再掲します。 ルティーンの点滴は医師のマンパワーと助産師の判断能力により、リスクのある産婦に限定して実施されることが望ましいが、安全性を特に追求したいのであれば、ヘパリンロックによる静脈…

医療介入とは 17 <RQ.分娩時のルティーンの点滴>

今まで分娩時の血管確保の実際について書いてきました。 今回は、「科学的根拠に基く快適で安全な妊娠出産のためのガイドライン(改訂案)」のリサーチクエスチョンについて考えてみようと思います。 RQ10:分娩時にルティーンの点滴は必要か? http://sahsww…

医療介入とは 16 <点滴、血管確保、子宮収縮剤、その5>

延々と分娩時の血管確保についての記事が続きますが、もう少しお付き合いくださいませ。 日々分娩に関わる私たちにとって出血とは本当に怖いものであり、その母子、家族の運命に大きな影響を与えることでもあるのです。 2010年4月に日本産婦人科学会など5学…

医療介入とは 15 <点滴、血管確保、子宮収縮剤、 その4>

緊急時の血管確保について書く前に、分娩の緊急時とはどのような状況でしょうか。 分娩時出血についてネット上で公開されている文献がありました。 「分娩時出血の初期対応(止める、入れる、送る)について」 弘前大学医学部付属病院周産母子センター (青…

医療介入とは 14 <点滴、血管確保、子宮収縮剤、その3>

静脈内に留置針を挿入して点滴をつなげ、いつでも必要な薬剤を静脈内に注射できるようにすることを「血管確保」といいます。 薬を口から飲む内服の場合には薬の効果が出始めるまでに30分程度はかかりますし、効きかたもゆっくりです。 皮下注射、筋肉注射と…

医療介入とは 13  <点滴、血管確保、子宮収縮剤、その2>

前回、私個人としては分娩時の血管確保はルティーンの処置にしたほうが良いと考えていることを書きました。 私自身、二十数年前に助産師として初めて勤務した総合病院では分娩時には点滴もしていませんでした。 赤ちゃんが生まれた時点で、外回りのスタッフ…

医療介入とは 12  <点滴、血管確保、子宮収縮剤、その1>

分娩時に点滴をした記憶がある方が多いのではないかと思います。 点滴と血管確保、そのどちらも静脈に留置針を入れることですが、目的は大きく二つに分けられます。 分娩進行中に発熱があったり、産婦さんが水分や食事を取れないときの脱水予防のために水分…

医療介入とは 11 <WHOの59か条、お産のケア実践ガイド>

前回の記事で紹介した「快適で安全な妊娠出産のためのガイドライン」でリサーチクエスチョンとして挙げられている項目は、1996年にWHOから出された「Care in normal birth:a practical guide」の流れを汲んだものといえるでしょう。 その翻訳が「WHOの…