新生児

医療介入とは 85  <「水中分娩」の適応と要約>

前回の記事の中で、以前の私のkikulogへのコメントを紹介しましたが、その中に以下の部分があります。 産科では、母子ともに安全な分娩のために、さまざまな医療処置や医療機器が開発されてきました。 帝王切開と麻酔、鉗子(かんし)分娩など、どれも絶対に…

新生児のあれこれ 28  <ヒトが水中で出産すること>

「こんな状況でもなぜ新生児は大丈夫なのか」と思うことに、水中分娩があります。 もちろん「大丈夫だなんてすごい」という感動ではなく、「よく無事でいられた」という安堵感ですが。 出産の現場というのは、イメージ以上に血液や排泄物がつきものであるこ…

新生児のあれこれ 27 <こんな状況でも大丈夫なことがあるのか>

世の中の雑菌などに対して出生時に初めて挑み、そして無防備な新生児です。 ですから「こんなことも起きるのか」と、未知の感染症がこれからも明らかにされていくことでしょう。 ところが反面、こんな状況でどうして新生児は無事だったのだろうとその免疫能…

医療介入とは 84  <胎盤を食べさせないための啓蒙>

約280日という限られた妊娠期間においてのみ発育し、児娩出直後剥離して排出される胎盤の機能ほど多彩な働きを示す器官は、他臓器にはみられない。 私にとって胎盤とは、まさにこの記述に書かれたものそのものでした。 いつ頃だったか記憶にないのですが、こ…

新生児のあれこれ 26  <感染症ではないとわかった病気ー新生児メレナ>

医学の進歩とともに新生児の感染症が次々に解明されてきましたが、反対に、感染症ではないとわかったものもあります。 新生児にビタミンK2シロップを内服させていることは、この件 があるまではあまり知られていなかったことでしょう。 新生児メレナという出…

新生児のあれこれ 25 <こんなことも起こるのか>

ここ30年ほどを振り返っただけでも、「新生児にはこんなことが起きるのか」と驚かされるような感染症が次々と明らかになりました。 <生ものは摂らない・・・リステリア菌感染症> 最近の話題では、リステリアによる母子感染もそのひとつです。 妊婦さんが、…

新生児のあれこれ  24  <兄・姉からの感染>

前回の記事で書いたように、退院後まもなく感染症で入院する新生児がいます。 特に、経産婦さんの赤ちゃんの場合、上の子の風邪や感染症をもらいやすいようです。 あるいは退院後に産後の手伝いがなくて、上の子の保育園や幼稚園の送迎をしなければならない…

新生児のあれこれ 23  <面会についての決まりごと>

生まれたばかりの赤ちゃん。 夜中でもいてもたってもいられなくて駆けつけてくれるご家族の方もいらっしゃいます。 上の子たちも、うまれてくる妹や弟のために頑張って起きて待っていてくれたりします。 できるだけご家族に赤ちゃんが祝福してもらえるような…

新生児のあれこれ 22  <新生児の感染症>

未だに世間に根強い認識のなかに、「新生児はお母さんから免疫をもらってきたから病気にはならない」というものがあります。 この場合は主に、ばい菌による病気、つまり感染症のことを指しているようです。 麻疹・水痘など母体から特定の免疫をもらっている…

新生児のあれこれ 21 <湿疹とあせも>

生後2〜3日もすると、体と手足はかさかさしているのに新生児の顔はしっとりとし始めています。 まゆ毛や耳たぶをさわってみると、ちょっと脂っこくなり始めている新生児もいます。 退院して1週間もすると、かなり顔や頭皮が脂っこくなって湿疹がでやすい時…

新生児のあれこれ 20  <皮膚がむける>

新生児の皮膚というのは、見れば見るほど不思議なものです。 朝あった傷が夕方には薄くなるぐらい皮膚の再生能力が高いのではないかと思う反面、いつもがさがさしていたりひび割れていたり、あるいはブツブツと発疹が出たり、お母さんたちの心配の種はつきな…

新生児のあれこれ 19 <ドライテクニックと1974年米国小児科学会の提唱>

ドライテクニックの中でも、生後数日は沐浴をしない方法を取り入れている施設の説明の中で、「1974年にアメリカ小児科学会で提唱されたドライテクニック」という表現がしばしば使われています。 正直なところ助産師になって以来、最近になって初めて耳にする…

新生児のあれこれ 18 <ドライテクニック>

前回の記事で書いたように、2000年前後から分娩直後の第一沐浴を実施せずにさっと血液などを拭き取るだけにし、翌日以降沐浴をすることが一般的になったと記憶しています。 最近は、さらに退院まで沐浴をしないという施設があることを耳にするようになりまし…

新生児のあれこれ 17 <人生最初の沐浴についての変化>

私が看護学生として産科実習をしたのが30年ほど前、そして助産師になって二十数年、その間に新生児の沐浴に対する考え方が大きく変化しました。 看護学生の頃、そして助産師になった頃は、分娩室には必ず沐浴槽がありました。 児娩出時間を見計らって適度な…

新生児のあれこれ 16 <沐浴(もくよく)>

新生児をお風呂に入れることを沐浴といいます。 私はこの沐浴が大好きです。 赤ちゃんが気持ち良さそうにお湯の中で手足を伸ばして、思わずカクンと居眠りしそうな様子でリラックスさせられると、「大成功!」とうれしくなります。 特に人生最初のお風呂に入…

医療介入とは 83 <臍帯切断は医療行為以外の何ものでもない>

助産師学生の頃、初めて分娩実習に出る前の緊張感というのは人生の中でもそうそうないほどの緊張だったように思います。 特に臍帯を切断する手順は、学生同士でも何度もゴムチューブを使いながら練習した記憶があります。 <臍帯の血流を止める> 当時の教科…

医療介入とは 82 <へその緒を誰が切るか>

へその緒を誰が切るのか。 現在の日本では医師・助産師は法的に認められた医療行為で、救急隊員はやむない場合、つまり臨時応急の手当てとして臍帯切断が許されていると法的に理解しています。 でも実際には夫や子ども、あるいは産婦さん本人が「へその緒を…

新生児のあれこれ 15 <臍帯の断面>

へその緒の消毒について、文献を紹介しました。 どちらも主に臍帯を切ってしばらくして、たとえば生後1日あたりからの消毒方法に焦点を当てたものでした。 案外と書かれていないのが、「臍帯切断直後に臍帯をどのように消毒し、どのように取り扱うか」という…

新生児のあれこれ 14 <新生児破傷風>

私が初めて海外医療協力に参加したのは1980年代前半でした。 当時はまだ熱帯医学や途上国での母子保健に関する国内の文献は皆無という時代で、イギリスのOXFAM(オックスファム)という海外医療援助団体から出版されていた「Where There Is No Doctor」が唯…

新生児のあれこれ 13 <臍帯消毒についての記事>

新生児の臍帯の消毒に関しては、国内でもまた世界的にもまだ標準的な方法はなく研究途上のようです。 ネット上で公開されている論文がありました。 「先進国における臍炎予防に有効な臍帯脱落および臍窩の乾燥を促進する臍帯ケア方法に関する文献検討」 (坂…

新生児のあれこれ 12 <へその緒がとれる>

小さな桐の小箱に入ったへその緒をお持ちの方も多いかと思います。 生まれた直後に新生児側に3cmほど臍帯を残して切断し、その後乾燥して脱落したものです。 退院間近になってもまだへその緒がついたままだと、お母さんたちはドキドキするようです。 いつの…

新生児のあれこれ 11 <どちらを向いて寝るか>

出生後の新生児は、通常、顔を左右どちらかに向けた姿勢をとっています。 これも統計がないかずっと探しているのですが、見つかりません。 案外、その左右どちらに向いているほうが多いのかという割合は調べられていないのかもしれません。 私の見た感覚的な…

新生児のあれこれ 10 <左と右、胎内での姿勢>

妊娠初期から28週頃までに、一気に臍帯が伸びることを前回書きました。 羊水の中でへその緒につながりながら、胎児はまるで宇宙遊泳をしているかのように自由自在に動いているのでしょうね。 妊婦健診の記録を見ていると、24〜25週前後だとまだまだ横位にな…

新生児のあれこれ 9 <左と右そして左右非対称、臍帯の捻転>

人の体というのは、そもそも左右非対称にできているのではないかと思います。 外見上は左右対称のようでも、体の中は非対称の部分がたくさんあり、それが巧妙な位置に収まってバランスをとっているのかと解剖学の授業では感激しました。 体内には、左右二つ…

境界線のあれこれ 2  <卵膜の中と外、胎児から新生児へ>

胎児から新生児へ、その最も大きな変化というのは水(羊水)の中で生きているか水から出て生きているか、とも言えるのではないかと思います。 私が助産師になった二十数年前はまだ新生児医療のあけぼのの時代でしたから、妊娠30週ぐらいの早産児でも助かる…

新生児のあれこれ 8 <足の動き>

新生児を見ていると、「案外動くものなのだ」ということに驚かされるようです。 それがよくわかるのが、保育器内にいる赤ちゃんかもしれません。 保育器についてのトリビアでパキスタンの手作りクベース(保育器)について書いてあるブログを紹介しました。 …

新生児のあれこれ 7 <あくび>

胎児も子宮内であくびをしているらしいことが報道されていました。 胎児のあくび、成長初期に多く 脳発達の過程と関係か (2012年11月22日、北陸中日新聞、夕刊) 英大学チーム研究 赤ちゃんが母親のおなかの中であくびをする様子を超音波検査の映像で継続的…

新生児のあれこれ 6  <涙>

もともと涙が出やすい私です。 涙もろいので、一旦涙腺が緩むと顔が腫れるまで泣いてしまいます。 飼っていた犬が死んだ時には一週間泣き続けました。 その時は顔も腫れましたが、泣きすぎてひどい頭痛になりました。 30代になって、ようやく人前では涙を抑…

新生児のあれこれ 5 <まばたき>

ほとんど目を閉じていることの多い新生児ですが、目をしっかりあけて見つめているような時があることを、カンガルーケアを考える11や新生児にとって哺乳行動とは何か1でも書きました。 「あ、私を見つめてくれている!」と喜んでいると、うんちをブリッ。 …

新生児のあれこれ 4 <手の動き>

新生児の手の動きについて、出生直後からの変化は実はものすごい早さの成長ではないかと思うことがあります。 新生児は、何を感じて手を動かし、触りながらどのような動きに進化させているのだろうと興味がつきません。 でも、案外そういう内容の本って見つ…