代替療法

助産師と自然療法そして「お手当て」 35 <整体の歴史と出産の医療化 2>

整体が妊娠・出産・育児の中で代替療法として残っている理由のひとつとして、「妊娠・出産は病気ではない」という認識が社会の中に根強く残っていることもあるのではないかと思います。 前回の記事で、野口晴哉氏が15歳で整体の療術団体を始めた1926(昭和元…

助産師と自然療法そして「お手当て」 34 <整体の歴史と出産の医療化 1>

野口晴哉(はるちか)氏の講演をもとにした「誕生前後の生活」(全生社、昭和53年)を参考に、整体の中での妊娠・出産・育児の考え方について一部を紹介してきました。 その本が出版された1978(昭和53)年頃までは、「誕生前後の生活」が書かれた時代1とそ…

助産師と自然療法そして「お手当て」 33 <新生児・乳児への整体>

整体とはどのような手技なのか検索していくと、整体院のHPには「うちではボキボキしたり痛いことはしません」「マッサージとも違います」といったことがよく書かれています。 では整体とはどのような手技なのでしょうか? 特に新生児や乳児に対して、何を…

助産師と自然療法そして「お手当て」 32 <野口整体と新生児>

すこし間があきましたが、また「誕生前後の生活」(全生社、昭和53年初版)に書かれている、妊娠・出産・育児に対する野口晴哉(はるちか)氏の整体の考え方をみていこうと思います。 こちらの記事で書いたように、野口晴哉氏はちょうどトリアゲババ(男性の…

助産師の自然療法そして「お手当て」 31 <へその緒を切るタイミング>

胎児は臍帯で胎盤につながっていて、子宮の中では胎児の血液が臍帯と胎盤の間を循環しています。 それによって肺呼吸に代わるガス交換や代謝を行っています。 出生と同時にその胎児胎盤循環は終わり、臍帯内の血管も閉鎖して自らの体内での血液循環が成立し…

助産師と自然療法そして「お手当て」 30 <野口整体の「ショック」という考え方>

前回の記事で紹介した、分娩後に「左右の骨盤が揃うまで、左右の体温を測定して一致するまでは安静臥床のまま過ごす」ということともに、もうひとつ、琴子ちゃんのお母さん経由で「仙骨ショック」がどうやら整体的な考えかたからきているらしいということを…

助産師と自然療法そして「お手当て」 29 <分娩時の骨盤万能論>

前回の記事で紹介したように、産後、左右の骨盤が揃うまで起き上がらない生活を実践している人がいることを琴子ちゃんのお母さん経由で知った時には、本当に驚きました。 病院や診療所で勤務していると、なかなかそういう人に出会うことはないからです。 と…

助産師と自然療法そして「お手当て」 28 <骨盤の収縮?ー産後の骨盤万能論>

整体を調べていると、整体という言葉自体が何を指しているのか全体像が見えてきません。 整体のサイトをみると、ある人は野口整体一筋であり、ある人はカイロプラクティックを取り入れて整体と呼んだり、中にはきちんとあん摩指圧マッサージ師の国家資格があ…

助産師と自然療法そして「お手当て」 27  <「誕生前後の生活」が書かれた時代 2>

こちらの記事で、野口晴哉氏の「誕生前後の生活」の序文を紹介しました。 1973(昭和48)年に出版された、この整体の妊娠・出産に関する講義をまとめた本の序文の最後の部分には、明らかに助産や産科医療への批判が書かれています。 再掲します。 斯くの如く…

助産師と自然療法そして「お手当て」 26 <「誕生前後の生活」が書かれた時代 1>

前回、野口晴哉氏の「誕生前後の生活」(全生社、昭和53年)の序文を紹介しました。 本文では、たとえば予定日超過の妊婦にどう対応するか、新生児仮死への対応などかなり医学的な「治療」の領域に踏み込んだ内容が書かれています。 こちらの記事で紹介した…

助産師と自然療法そして「お手当て」 25  <「誕生前後の生活」より>

妊娠・出産・育児に関しての「整体的な考え方」はこの本に行き着くのではないかと思われる、野口晴哉(はるちか)氏の本を紹介してみようと思います。 整体法叢書「誕生前後の生活」(野口晴哉著、全生社、昭和53年初版)です。 私の手元にあるのは、20004(…

助産師と自然療法そして「お手当て」24  <助産師と整体、整体協会について>

私自身は肩こりとも無縁で、また他人にマッサージなどで体を触れられることは苦手なので、整体やマッサージの世界はよく知りませんでした。 ただ、助産師の世界には骨盤ベルトや骨盤ケア、べびぃ整体など整体という言葉を耳にする機会が多いのでだいぶ前から…

代替療法とはなにか 5    <日本の代替療法の変遷>

今回は、日本の近代医学と代替療法がどのように変遷してきたのか、私自身の頭の整理をかねて書いてみようと思います。 <日本の近代医学と病院の変遷> 16世紀末のオランダで、医師教育のために大学内に病院、植物園(薬局に相当)を付設したあたりが、現代…

代替療法とはなにか 4    <病院+看護=近代医学>

現代の日本では、当たり前のように病院があり、医学にもとづく治療と看護を受けています。 まるでずっとずっと昔からそのシステムがあったかのように。 前回に引き続き「看護のための精神医学 第2版」(中井久夫・山口直彦著、医学書院、2008年)の「《歴史…

代替療法とはなにか 3  <歴史からみた医学・看護学>

前回の記事で紹介した代替療法の一部のリストを見るだけで、その数の多さに圧倒されそうです。 それだけあれば、なにかひとつぐらいは自分にあったものがありそうな気さえしてきます。 「医療従事者のための補完・代替医療 改訂2版」(今西二郎編、金芳堂、2…

代替療法とはなにか 2 <代替療法は「全人的」なのか?>

「全人的な」という言葉が臨床で聞かれ始めたのは、1980年代終わり頃だったでしょうか。 主に癌の終末期を迎えた患者さんに対して、心身ともに穏やかに死を迎える準備の中で使われ始めたように記憶しています。 その後、ホリスティックという言葉で、終末期…

代替療法とはなにか1  <主流派の医師の大半が認めていない治療法>

「助産師と自然療法そして『お手当て』」はまだまだ続きますが、一旦、代替療法とは何かということを考えてみようと思います。 これまでのエントリーを読まれた方には、代替療法、自然療法あるいは民間療法と聞くだけで、「うさんくさいもの」と私に刷り込ま…

助産師と自然療法そして「お手当て」23 <バイブル商法と私のあちゃーな経験>

私自身の中にも「人とは違う」という自意識の強い部分があって、そのために人生経験を豊かにできた面もあれば、今思い出すと赤面する体験もあります。 今までの記事の引用で使用してきた大森一慧氏の「自然派ママの食事と出産・育児」(サンマーク出版、2005…

助産師と自然療法そして「お手当て」22 <マクロビベビー>

マクロビベビーという言葉があることを知ったのは、2010年の頃でした。 妊娠中にマクロビ食を実践して生まれた赤ちゃんのことらしいです。 検索すれば、この言葉を使っている人たちが実際にいることもわかります。 doramaoさんの「マクロビとホメオパシー 共…

助産師と自然療法そして「お手当て」21 <母乳哺育とマクロビ的なもの>

代替療法について調べていると、代替療法を実践されている方々の体験記を読む機会が増えました。 あくまでも印象ですが、ひとつの代替療法を厳格に実践し続けるというよりは、「ゆるふわ」といろいろなものを適度に取り入れているという方が多い印象ですね。…

助産師と自然療法そして「お手当て」20 <助産師とマクロビのつながり>

助産師とホメオパシーについて調べていた時に、「前置胎盤に効くレメディ」なんていうものを使っている助産師がいることに心底驚きました。 そして「助産師、マクロビオティック」で検索すると、こんな話が。 妊娠前期に前置胎盤と言われました。(中略) マ…

助産師と自然療法そして「お手当て」19 <マクロビとアトピー性皮膚炎>

「穀物菜食の育児をすれば(予防接種の適応になるような)感染症は発病しても軽くすむか、発病しないという体験をもっているのが普通」と信じて予防接種を受けさせなかったとしても、他の人たちが予防接種をすることでそういう子どもたちを流行から守ること…

助産師と自然療法そして「お手当て」18  <マクロビと予防接種>

こちらの記事で紹介したkikulogの代替療法と予防接種に関する議論に出会うまで、私自身は予防接種を受けない理由に代替療法の考え方があることを、医療従事者でありながら不覚にも知りませんでした。 予防接種に否定的な小児科医の本とかは知っていましたが…

助産師と自然療法そして「お手当て」17 <マクロビ「妊娠・出産・育児のなんでも相談編」つづき>

前回の記事に続いて、マクロビオティックの妊娠・出産・育児に関する考え方をみていこうと思います。 正直なところ私の理解をこえた内容が多く読むのも大変なのですが、それでも妊婦さんや助産師までひきつける何かがその中にあるとしたらそれは何か知りたい…

助産師と自然療法そして「お手当て」16 <マクロビ「妊娠・出産・育児のなんでも相談編」>

今回の記事から、いいよいよマクロビオティックの妊娠・出産・育児に関するいわば各論の部分を見ていこうと思います。 引き続き、大森一慧氏の「自然派ママの食事と出産・育児」(サンマーク出版、2005年)の内容を紹介していきます。 著者は栄養士の資格を…

助産師と自然療法そして「お手当て」15 <マクロビの妊娠・出産の「トラブル」>

引き続き、大森一慧氏の「自然派ママの食事と出産・育児」(サンマーク出版、2005年)に書かれている「食をととのえて迎える出産は、トラブルが少なく、安定している」の章をみていきたいと思います。 ところで2005年というのは、どんな頃だったのでしょうか…

助産師と自然療法そして「お手当て」14 <マクロビの安産と難産>

前回に引き続き、大森一慧氏の本の「食をととのえて迎える出産は、トラブルが少なく、安定している」という小見出しの部分から考えてみます。 「安産」と「難産」という表現は日常的には使われるのですが、実際には定義もないし学問的には使われない言葉です…

助産師と自然療法そして「お手当て」13 <マクロビの「食をととのえて迎える出産」>

マクロビオティックの中でも出産・子育てに言及した本は、著者が違うと内容もバラバラでそれぞれがそれぞれに「理論」を作っているというのが印象です。 ですから、今回の記事からしばらく、栄養士という肩書きのある大森一慧氏の本に従ってマクロビの出産に…

助産師と自然療法そして「お手当て」12 <マクロビの安産志向とアンビバレンツ>

以前の記事で日本に硬膜外麻酔の無痛分娩が広がらないのは、助産師側あるいは日本の社会の中の「産みの痛みを耐えてこそ母になる」という考え方が根強いからだというとらえ方には、私自身はどうなんだろうと懐疑的な立場であることを書きました。 たとえば、…

助産師と自然療法そして「お手当て」11 <マクロビの安産志向の背景にある思想>

昨日のマクロビのお産に対する思想の記事にいただいたyamyamutohさんとrenyankoさんのコメントから、もう少しその思想背景について思うところを書いてみようと思います。 <富国強兵政策と母子保健> ・お産が苦しいなどというのは、食養を破った罪人だけで…